高品質、安全な香水製造とは?GQPGVP
今回は、安心安全な香水製造について書きたいと思います。
香水は作るだけならそんなに難しくはありません。
香料をエタノールに溶かして、ボトルに充填させるだけです。
詳しくは↓のリンクで確認してください。
ただ、プロとしてお客様に安心してご利用いただける香水を作るとなるとハードルが上がります。
化粧品製造業、製造販売業許可取得
日本では化粧品製造業、製造販売業許可があります。
香水は医薬品や医薬部外品と異なり、人に対する効用があるものではありませんが、化粧品に含まれ、規制の対象になっております。
化粧品製造業とは化粧品を製造する許可、製造販売業とはOEMなどで製造してもらった商品を自己の名の責任の元、販売または利益を供与することが出来る許可です。
朧は当然、自社の工場で製造、販売をおこなっているのでいずれの許可も取得しております。
二つの許可はそれぞれ申請から1カ月ほどで取得できるのですが、
実際は申請まで薬務課の行政官と様々な相談をするので実際にはもう少しかかります。(東京都では事前相談義務制)
近年化粧品の製造には強い規制が引かれる傾向にあります。
日本では医薬品審査担当という医薬品を製造する部署が化粧品の監督をしている状態で、医薬品製造に対する高いレベルの手順が要求されることになります。
許可取得の内容
製造業と、製造販売業はそれぞれ求められる基準が違いますが、難しいのは製造業の許可になります。
製造業と、製造販売業の許可の基準は実際被っていることも多いですが、製造業のみに要求される基準があるからです。
先ず、人事や手順書の作成などのソフトの面、工場の設備、外部試験検査機関を設ける場合はそちらとの契約などハードの面に分かれます。
ソフト面での基準は必ず工場の責任者に総活また責任技術者を置くこと。
また、品質保証を品質保証責任者に行わせること、安全管理を安全管理責任者に行わせることです。
責任ある製造並びに販売には必ず、責任者を置かなければなりません。
品質保証責任者や安全管理責任者の条件は各会社の手順書にて予め決定することが出来ますが、その上の工場の最高責任者である責任技術者においては法定で条件が決められております。
①薬剤師
② 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
③ 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の科目を修得した後、医薬品、医薬部外品又は化粧品の製造に関する業務に3年以上従事した者
④ 厚生労働大臣が①②③に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
製造販売業の総括にも同じ条件が必要ですが。製造販売業の総括と製造業の責任技術者は兼務可能です。
このような責任者を選任すること。さらには許可を取得でき製造に取り掛かった後でもしっかり品質保証、安全管理が出来るように、予めGQP、GVPと呼ばれる手順書を作っておく必要があります。
それもしっかり書けてるかどうか、現地調査の際に行政官に確認されます。
ハードの面での基準も簡単にクリアできるわけではありません。
建物の構造をチェックされます。
香水を充填する場所はほかの部屋と隔離されているかどうか、トイレが近かったりしないか、梱包包装室は充填室程高いレベルの衛生環境は要求されませんが、それでもほかの部屋と隔離されており衛生的に問題がないか確認されます。
前室にて着替えるスペースがあるかどうか、人と物の動線を確認して、衛生的かつ効率的な製造が出来るように等書ききれませんが、
「自分の愛する家族にここで製造した化粧品を渡せるかどうか」
という基準で確認すればおのずと答えは出てくると思います。
ただ一つ言えることは、防虫防鼠に関してはかなり敏感に対処しなければならないことです。
虫やネズミの侵入は清潔とは真逆の概念です。換気扇には金網を張るなどして絶対に侵入させない設備にしなければなりません。
弊社の場合は現地調査の際に、天井の排水管について突っ込まれました、排水管の上に埃や塵がたまり化粧品に不純物として混入するのではないかという指摘です。
最終的には排水管のリフォームをするのは難しかったので、清掃の手順書を作成し、2週間に一回は清掃を行い、その内容を記録に残すということでなんとか許可を頂きました。
こんな感じでハードの面ソフト面で基準をクリアして許可を取得していきます。
製品化の段階での安全性確保
製品化の段階でその製品が安全かどうかといったことを検査します。
検査には大きく分けて2つあり禁止成分などの混入がないか理化学試験で確認するもの、パッチテストなどで人の体にとって安全に使用できるかの確認です。
理化学試験
自社工場に試験検査設備がない場合は、必ず外部の試験検査機関と契約をし、商品発売までにホルムアルデヒドなどの禁止成分が製品に含まれていないか検査を行なう必要があります。
また法令で定められてはいないが、香水製造上避けては通れないのがIFRA(国際香粧品香料協会)が定めたガイドラインになります。
このガイドラインは安全性の確保された香料を流通することを目的としています。
近年このガイドラインの規制範囲は広くなっており、製造中止となった製品もあります。
特に、天然香料は構成する数百成分の内、未だに解明できていない成分も含まれており、アレルゲンが存在する可能性が高い為、
規制の対象になりやすい傾向にあります。
法的な拘束力は無いにせよ、無視はできない基準です。
安全性試験
化粧品は不特定多数の人々に使用され、その使用方法も使用者にゆだねられている為あらゆる可能性を考慮した上で、安全性試験を行う必要があります。
これらの実験は、最終的には生身のヒトで確認が必要ですが、ウサギやモルモットを使用し検査されるのが一般的です。
ヒトに対する実験はあくまで倫理的に問題が無い様に実施されなければなりません。
先ず第一に確認すべきは皮膚炎が起こらないかどうかです。
また、香料によっては、光線の存在によって皮膚刺激性反応を起こすものがあります。
これを光毒性物質といい、ベルガモット精油中のベルガプテン(メトキシソラレン)によるベルロック皮膚炎が知られています。
朧では、ヒトによるパッチテストによって、皮膚刺激性、光毒性の試験をおこなっております。
先ずは、香水を両腕に塗布し、絆創膏で固定した後、24時間おきます。
24時間後に香水を落とし、肌に赤みや腫れが無いか確認します。
また、光毒性の試験においては塗布した場所に市販のブラックランプを照射し、照射していない部位との反応の差を観察します。
まとめ
以上、香水はまず、適切な設備のある工場で製造されなければなりませんし、
それぞれのオペレーションに責任を持たせるために責任者を配置することが必要であるとご理解いただけたと思います。
そして、それぞれの責任者にしっかり業務を遂行してもらうために、予め手順書を制定し遵守しながら、製品の製造、販売をおこなう必要があること。
化粧品GMPの趣旨は、①なぜそのような事になったのか②そのことについて遡って確認できることです。
手順書を遵守しながら、必ず書類は残し、後で見直せるようにしなければなりません。
問題が起こってから対処ではプロとは言えないのです。
また、それぞれの製品には、法令で禁止された成分が含まれていないか理化学試験でしっかり確認を取り。
最後にヒトによるパッチテストによって、実際に利用状況に則して、安全性を確認します。
朧では上記の製造、品質管理、販売を徹底し、高品質で安全な香水製造をしております。
是非弊社の商品をお試し頂きたく存じます。
調香師 三代 孟史