「朧」の由来とは?

 

朧と聞くと、良いイメージを持たない方も多いかもしれません。

 

辞書には、はっきりしないとか、不確実なことやぼんやり霞んでる様などとかかれています。

どれもパッとしない様子です。

 

朧はよく朧月夜という言葉で使われることが多いです。

 

朧月夜というのは、月が霧や霞に包まれて霞んで見える春の夜のことです。

 

 

この朧月夜、古くから日本人を魅了してきました。

 

皆さんは、源氏物語を読んだことはありますか。

 

かなり長い話が続きますし、内容も入り組んでいて難しいので読むには根気がいります。

私は、大学生時代に時間をかけて読んだことがありますが大変でした。

 

この源氏物語に登場する、朧月夜という女性がなんとも人間臭くて好きなんです。

 

源氏物語は皆さんもご存じの通り、主人公の光源氏の生涯を綴った物語です。(実際には源氏死後の物語が続くが)

 

源氏は、めちゃくちゃイケメンで、多くの女性と恋をします。その恋模様がなんとも優雅で、読む者を魅了してきました。

 

色んな女性が登場しますが、その中でも朧月夜という女性は、生まれも育ちもよく、教養があって、美人のお嬢様でした。

天皇からも寵愛を受け、正妻になる予定だった女性です。

 

しかし、そんな中、朧月が輝く夜に源氏と禁断の関係になってしまうんです。

 

朧月夜は言います。

 

「あなたは私のことが好きというけれど、本当に好きなら月のない暗い夜に会いに来るでしょうか?目的もなく迷ってる時に偶然会っただけじゃないですか。」

 

源氏は返します。

 

「曇っているでもなく照っているでもない、春の夜の朧月夜ほど美しいものは無い。でも、私たちの出会いはおぼろげ(不確実なもの)ではない、確実な運命だよ」

 

これは、源氏の正妻である葵上が妊娠している時の話です。お互いに浮気をしています。

 

しかし、朧月夜は浮気が良くないことだと分かっていながら、隠し隠し自ら源氏との関係を継続してしまいます。

 

手紙を交換したり、自ら源氏を呼び出すこともありました。

 

結局、自身の体に男の帯が纏わりついているのがバレて、源氏との関係が明るみになります。

朧月夜は天皇との結婚は破棄され、源氏は須磨に島流しに合い、あっけない最期を迎えます。

 

分かっているけど抗えない本能。朧月夜はそれほど源氏のことが好きだったんだと思います。

 

そんな人間臭い朧月夜に私は魅了されました。

 

人はどうしても理性をもってしても抗えない本能を持っています。

 

香りは五感の内唯一、本能を司る大脳辺縁系に繋がっており、直接本能に訴えかけられるものです。

 

ある香りを嗅いだ時に、フラッシュバックの様に過去の思い出が蘇ったことはありませんか。

その時に感じた、楽しい、悲しい、ドキドキ、嬉しいといった感覚も一緒に蘇らなかったですか?

 

私は、朧月夜の様に理性を失ってしまうほど魅了し、決してあらがうことのできない運命を導くことのできる香水を作りたいと思ったのです。

 

それが、朧の由来です。

 

朧の名前の由来は、最初に発売した『NEON』のテーマにぴったりです。

 

 

『NEON』の香りは、分かりやすく、はっきりしているわけではありません、どちらかというと複雑で嗅ぐ度に様々な顔を見せてくれます。

 

源氏が、曇ってるでも照ってるわけでもない朧月夜ほど優雅で美しいものは無いといったように、夜に咲く幻想的なジャスミンは優雅でうっとりするような香りです。

 

是非、お手に取って試してみてください。時間を忘れて酔いしれること間違いなしです。

 

ただ、朧月夜の様に危険な道へは進まないようにお願いします。

 

調香師 三代

 

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