『朧』代表について。調香師を目指した理由。ブランド設立まで。
今回は、朧の創業者であり、調香を担当している私、三代についてと、ブランド創業までの道のりに関して書きたいと思います。
日本で調香師というとあまり馴染みがないかもしれません。
そもそも、香水に関して他国よりも関心が薄いと言えるかもしれません。
私も、多くの日本人の中の一人で香りに関して深い関心はありませんでした。
学生時代は、ライジングウェーブしか付けたことが無かったぐらいです。
ライジングウェーブというとドン・キホーテ等で販売されている格安香水で、
学生に人気なものですが、こだわりを持って纏うというものではないと思います。
(香り自体は爽やかですが)
そんな自分が香水に興味を持ったのは、学生を卒業して社会人になってからでした。
百貨店で店員に
『大人の色気が出せる香水を紹介してもらえませんか』
と伝えたところフレデリックマルの『ムスクラバジュール』を紹介されました。
ムエットを貰い嗅いだところ、なんだかおばさん臭いというか、爽やかとはかけ離れているし、しつこい臭いだと不快感を感じました。
しかし、その場ではいい香りだとは思いませんでしたが、その香りが忘れられず、なぜかもう一度嗅いでみたいという感覚を持ちました。
改めて、お店に足を運びその香水を嗅いだところ、とても複雑な香りの構造を感じました。
そして、嗅ぐ度に新しい発見があり、いつの日かその香水の魅力にはまってしまったのです。
元エルメスの調香師のジャンクロードエレナは調香師とは文筆家であるとその著書である『香水』にて述べております。
私はこの言葉を思い出しました。
名著は読めば読むほど深みが出て、いつも違った発見を私たちに気付かせてくれます。
『ムスクラバジュール』は嗅ぐ度に新しい発見があり、まさに名著を読むようでした。
初めて嗅ぐときは、バニラしか感じなかったのに、二回三回と嗅ぐ度に、シナモン、ベルガモット、ムスク、ジャスミンなど様々な香りが押し寄せてくるのを感じました。
私はここで、香りの奥深さ、面白さを知り、香水に関心を持ちました。
香水に興味を持ってから。2020年6月に『香楽塾』という通信制の調香師育成塾に通いだしました。
その塾の基礎講座では、香水の基礎的な知識を学ぶことが出来、香水通になることが出来るといったものでした。
様々な香料、香水が送られてきて、香りを楽しみながら学べる有意義な講座だったと記憶しています。
立川先生というポーラの調香師をされ第一線でご活躍されてきた方の下、香料を覚えていきました。
勉強した香料はどれもいい香りでしたが(インドールなどの糞便臭のする不快なものもありましたがw)、ジャスミンアブソリュートを嗅いだ時のことは今でも覚えています。
この世にここまで官能的で複雑で幻想的な香りがあったのかと驚きました。
今まで嗅いできた、ジャスミン茶やトイレの芳香剤等の人工的なジャスミンとはまるで違いました。
香りの高級感というか言葉で表せないような魅力があったのです。
まさに、自然が作り出した神の調香だと思います。
そして
『ジャスミンアブソリュートをふんだんに使った今までにない自分の納得する香水を作りたい』と考えたことが調香師を目指すきっかけになりました。
その後、実際に調香師を目指すパヒューマーコースを受講しました。
ここでは、単品香料から香水を作り出せる技法を学びます。
毎日送られてくる香りサンプルを嗅いで覚え、先生から送られてくる問題を解く日々が続きました。
毎日没頭した甲斐もあり2020年8月に最短で卒業しました。
卒業してからは、世界中の香料を輸入して実際に自分で嗅いだり調香したり独学の時間にあてました。
香料は決して安いものではないですし、輸入の為の輸送費はバカになりません。
また、ジャスミンアブソリュートなんかは1㎏100万円程高価な香料ですが、産地によって香りが若干違うのでそれぞれの産地のものを取り寄せて嗅ぎ分けたりしていました。
常に金欠状態で、好きではないと絶対に続けられなかったと思いますw
調香の訓練は、習うより慣れろです。
これは、立川先生も仰っており、様々な作品を作っていくことで調香のアコード(香料同士の比率)を覚えていけるものです。
作品を沢山作って、作るたびに友達に渡して感想を貰っていました。
作品を作る中で、一つ参考になる香水がありました。
1995年発売のエスティーローダーのプレジャーズです。
シアフレグランスと言い、透明感のある香りが特徴の香水です。
ミュゲやジャスミンなどのフラワーノートにムスクと心地よい甘さが相まって優しい香りなんですが、ヘリオナールという水っぽい香料が良いアクセントになっており、マリンノートのようなさっぱりとした香調です。
一般的にフラワーノートやムスクといった女性向けの香料でも表現次第ではメンズにも似合う様なユニセックス香水が出来るのだと学びました。
ゆくゆくの朧の『SKYBLUE』を調香するときのヒントになりました。
このプレジャーズを調香したのがアルベルトモリヤスという調香師で、カルバンクラインのCK1やジョルジョアルマーニのアクアディジオ等数々の名香を作ってこられた方です。
インスタもおしゃれでこんなイケオジの調香師になりたいとモチベーションが上がったのを覚えています。
『NEON』の調香はシャネルの『NO5』やジャンパトゥの『JOY』などを参考にして、ジャスミンの熟したバナナのような花というよりはアリマリックな香りを出せないかどうかという点を焦点にあてて行いました。
『NEON』で使われている香料はどれもパワフルで癖の強い物ばかりです。
ジャスミンアブソリュートを筆頭にシベットやカストリウムなどのアニマル香料、スパイス系も天然にこだわり使用しております。
中でもジャスミンアブソリュートはこの香水で一番多く含まれており、
まとめあげる為のアコードがとても難しく難航したのを覚えています。
使い捨ての銀紙に混ぜては捨ての繰り返し。途方もない作業でした。
2022年2月に『朧』が始動しました。
シャネルの『NO5』の様に100年売れ続ける究極の香水を作りたいという目標の為、香りの無限の可能性に賭けたいと思い創業したのです。
メンズ向けとは謳ってますが、メンズ向けに製作しているわけではありません。
よく、香水は化粧品で、化粧品自体女性のモノのように扱われることが多いです。
以前の私のように香水に関心のない男性にもっと興味を持ってほしくて『男性用』と明記しました。
それくらいの気持ちです。
香水は90年代からユニセックスの時代と言われております。
男性、女性隔たりなく香水をご使用いただける時代です。
また、一般的に花の香りバニラ、ムスクは女性的、香草の香りは男性的と言われますが、香水には数十、数百もの香料が含まれており、
男性用女性用と区別するのも基準はなく難しい問題です。
そもそも、花の香りバニラやムスクにも様々な表現方法があります。
男性用と謳ってますが、是非女性にもご使用いただければと思います。
朧は香りにとことんこだわるメーカーです。
芸能人やスポーツ選手がプロデュースしている、他社で作ったOEM商品は取り扱っておりません。
あくまでも、自社で研究し、自社で製造販売をおこなう独立メーカーです。
是非、自信ある商品をお手に取って頂きたいと思います。
調香師 三代